掲載日 | 2023.01.30
更新日 | 2023.01.30

【医師監修】肌科学から見直す、美肌菌を育てるスキンケア

掲載日 | 2023.01.30
更新日 | 2023.01.30
私たちの皮膚に棲んでいて、健康で美しい肌を作ってくれる美肌菌。でも普段あたりまえのように行っているスキンケアは、この美肌菌をいじめて減らしてしまうスキンケアかもしれません。

肌科学の視点から普段の洗顔やスキンケア習慣を見直すことで、自然としっとり潤う美肌を目指しましょう。
「美肌菌」の命名者である出来尾格先生にご監修いただき、美肌菌を育てるための基本のスキンケア方法をご紹介します。

美肌を育てるために「NGなスキンケア」とは?

皆さんは毎日、どのようなスキンケアを行なっていますか?

  • 朝:洗顔料での洗顔→化粧水や乳液での保湿→日焼け止めの塗布
  • 夜:クレンジングでのメイク落とし→洗顔料でのW洗顔→化粧水や乳液、クリームでの保湿

このような洗顔、スキンケア方法が一般的かと思います。

他にも美容液やパック、部分用のクリームなど…。加えようと思えばキリがないくらい、さまざまなスキンケアアイテムがありますよね。

化粧水や乳液などでしっかり保湿しているのに乾燥してしまう

こんな悩みをお持ちの方は、もしかすると普段のスキンケア習慣が逆効果になってしまっているのかもしれません。

前回以下記事でもご紹介したように、私たちの肌には美肌を作ってくれる「美肌菌」をはじめとする常在菌が棲んでいます。


洗顔や保湿といった日々のスキンケアが肌にどのような影響を与えているのか、この常在菌・美肌菌に着目した肌科学の視点から見ていきましょう。

美肌菌視点の【洗顔】は洗いすぎに注意

一般的に皆さんが毎日行う洗顔。クレンジングや洗顔料を使用して、メイクや汚れ、古い角質や皮脂を洗い流します。

ただこの時に肌表面の「美肌菌」も落ちてしまい、その数を減らしています。

美肌菌とは肌のために良い働きをしてくれる、いわゆる善玉菌のこと。中でも美肌菌としての働きがよくわかっているものが「表皮ブドウ球菌」です。

表皮ブドウ球菌の役割は大きく2つあり、1つ目は【グリセリンなど天然の肌保湿成分を作り出すこと】。もう1つは、【肌を弱酸性に保つことで、悪玉菌の増殖を防ぐ】ことです。(※1)

つまり美肌菌の数が減ると、肌が乾燥しバリア機能も落ちるということ。

特に洗浄力の強いクレンジングや洗顔料を使用して1日に何度も洗顔すると、必要な皮脂が奪われ過ぎてしまい、美肌菌が棲みづらい肌環境になってしまいます。普段の洗顔が、やり方や回数によっては肌に悪影響を与えてしまうのです。

保湿化粧品の成分が美肌菌を減らしてしまう?

多くの方は、「洗顔後に化粧水をしっかり肌の内側まで浸透させることが大事」と思っているのではないでしょうか。でも健康な肌は本来、角質層のバリア機能により、外からの化粧水は肌内部まで浸透することはありません。

皮膚には皮脂膜があり、水と混じりにくい性質があります。化粧水の浸透をよくするために化粧水にはエタノールや界面活性剤(乳化剤)を使って浸透性を高めているケースが多いのです。

ただ、このエタノールや界面活性剤の使いすぎは、かえってバリア機能にダメージを与えて肌の乾燥を引き起こす要因となることも。(※2)

さらに化粧品に用いられる防腐剤の中には、美肌菌に対して抗菌活性を有する成分があることも分かっています。通常使用では大きなダメージは考えにくいですが、スキンケアの重ねすぎ、使いすぎにより影響が出る可能性もあります。(※3)

美肌菌観点でのスキンケアポイント

常在菌や肌科学の視点から見ると、美しく健やかな美肌を保つポイントは、これまで当たり前のように使ってきたスキンケアアイテムに頼ることだけではなさそうです。

大切なのは、人の肌にもともと存在する美肌菌が育ち、活動しやすい肌環境を整えてあげること。スキンケアもそうした視点が大切です。

美肌菌を守り育てる基本の【洗顔

それでは、美肌菌を守り育てるには、どのようなスキンケアを行えばよいでしょうか。まずは、美肌菌の数を減らさないための洗顔です。

洗顔は、汚れやメイク、余分な皮脂や汗を洗い流すために行うものですが、このとき美肌菌も摩擦や洗浄成分によって一緒に流れ落ちてしまいます。美肌菌は常在菌なので、ある程度時間が経つとまた増えますが、菌を落としすぎない洗顔が望ましいといえます。

美肌菌を減らさないための洗顔手順を解説しましょう。

1.朝の洗顔

まず、1日の洗顔回数は朝と夜の2回を目安に、強く擦らない洗顔を心がけましょう。

朝は洗顔料を使わず、ぬるめのお湯(34〜35℃)で洗顔します。冷たい水では皮脂汚れやメイクの油性成分が落ちにくく、体温を超えるような熱いお湯では角質層にある保湿成分が流れ出てしまうので、ぬるま湯がベストです。

擦らないように、ひたひたとお湯に顔をつけるイメージで洗います。シャワーを浴びる時は、強い水流を顔に当てないように気をつけましょう。

2.夜の洗顔とクレンジング

夜はクレンジングと洗顔料のダブル洗顔は避け、一度でメイクも落とせる洗顔にします。

1日つけたメイクは夜には体温で溶け、ある程度落ちやすくなっています。皮脂も28℃で溶け始めるので、ぬるめのお湯(34〜35℃)と洗顔料があればメイクも皮脂も洗い流せます。

使用する洗顔料は、弱酸性の洗顔料や界面活性剤が少ないタイプのジェル洗顔が良いかもしれません。

化粧品成分には人それぞれ相性があるもの。配合成分はなるべくシンプルなものだと、敏感な方でも選びやすいでしょう。泡立てネットなどでテニスボール1個分の泡をつくり、泡で肌に触れていくように洗って行きます。流す時も朝と同様、擦らないひたひた洗いを心がけましょう。

W洗顔なしでも落ちる程度のメイク、がポイント

化粧品の選び方も、メイクを落とす時の肌への負担が軽減できるものに。元々水に強く落ちにくいメイクをしていると、上記の洗顔だけでは不安が残るでしょう。

ウォータープルーフの日焼け止めやファンデーションは必要最低限に、ポイントメイクはお湯で落ちやすいアイテムを選ぶこともポイント。

これまで入念な洗顔をしてきた人は、皮脂や汚れが残っている感じがしてスッキリしないと感じるかもしれません。しかし肌が本来持っているターンオーバー作用で十分に汚れのない潤った肌になります。

それでも汚れやメイクが落ちるか心配という方は、皮脂が多い鼻の周りやニキビができやすい箇所だけ、毎回クレンジングや洗顔料を使った部分洗いをするのも方法です。また、クレンジングを選ぶ場合には、なるべく界面活性剤が少ないタイプが良いでしょう。

美肌菌を守り育てる基本の【洗顔後スキンケア】

次に、美肌菌の働く環境を整える、洗顔後のお手入れ方法です。

肌の常在菌である美肌菌は皮脂や汗を分解して、代わりに保湿成分を作り出してくれています。(※1)
美肌菌が正常に働いていれば、シンプルなスキンケアで自然に潤うのです。

「でもクリームやオイルなどの保湿剤を使わないと乾燥がひどい」という方は、美肌菌の働きが弱り、肌バリアが壊れてしまっているのかもしれません。

角質層の「うるおいバリア」を壊しているのは習慣的なスキンケアの重ねすぎ、ということもあります。界面活性剤や防腐剤の入ったスキンケアアイテムの使いすぎは止めて、美肌菌のことを考えたスキンケアを行いましょう。(※2)

アイテム数が増えるほど、肌につける成分数が増え、アレルギー反応などの敏感肌への入り口にも。シンプルケアを心がけましょう。

美肌菌観点のスキンケアアイテムの選び方▼

適度な汗をエサにして美肌菌が増える

夜は、洗顔やスキンケアが終わったあと、軽く体を動かしてから眠るのもおすすめです。

美肌菌は皮脂や汗をえさに保湿成分を作り出すので、乾燥した肌よりも少し汗をかいている肌で活性化します。

さらに、汗には抗菌ペプチドという成分が含まれ、悪玉菌の増殖を防ぐ役割も。スキンケアアイテムではなく、汗で潤うというのは意外かもしれませんが、人と菌が自然にもつ力を活かしたいですね。

美肌菌を活かすスキンケアで潤い肌に

今までのケアを手放すことを不安に思われるかもしれませんが、これまでの常識から離れて、美肌菌を守り育むスキンケアを継続してみてください。肌は自然と潤い、整った美しい肌になっていくはずです。

特に秋冬は乾燥し、気温も低い冬は肌にもトラブルが起こりやすい季節です。次回は本格的な冬到来の前に取り組みたい、美肌のための生活習慣や食事習慣などをご紹介します。

【参考文献】

  1. 東京医療保健大学ホームページ ヘルスケアコラム「皮膚の常在菌について」
  1. 宮野直子. 界面活性剤の皮膚常在菌への影響. 大阪府立公衆衛生研究所報第47号. 2009年
  2. Qian Wang et al. Effect of cosmetic chemical preservatives on resident flora isolated from healthy facial skin. 2019. p652-658.

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
X : @yutaka_shimo

プロフィールを見る